話題提供 絵本カフェ めばえ 店主 洞本 昌哉氏

日時:令和元年6月17日(月)午後7時~午後9時10分

場所:TAMARIBA

<赤澤副会長挨拶>

宗田会長に代わって、ご挨拶いたします。今日も、そういうお話があると思いますが、地元にゆかりのある人が、地元の残すべき建物や空間を生かして、この町がもっと住み易くなり、新しい価値を提供していく空間を創ることは大事なことだと思っています。そして、地元を出て帰ってこない方が沢山いらっしゃる中で、北区は、元々、縁のあった方が帰ってきて、地元を住み易くするような色々なことをされている本当に良い地域だと思っています。そして、こういう事を体現するような場所が、今日、お話を頂く「めばえ」なのではないかと思っています。

今日は、経営者の方から直接、事業を始めるようになった経緯ですとか、今、ここにどのような人たちが集い、どのようなことが生まれているのかといった色々な物語をお伺いできることを本当に楽しみにしております。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

<話題提供>

皆さん今晩は、洞本と言います。先ほど赤澤先生から何故、この地で絵本屋を始めたのか話をしろとハードルを上げていただきました。この会の趣旨からいえば、皆さんの質問にお応えする形で進めていくことが望ましいと思いますが、その切っ掛けとしてパワーポイントを持ってきました。どうしても聞きたいということがありました先にお聞きします。洞本にこれだけはしゃべらせてやろうということはありませんか?今日ご参加の皆さんはお商売をされている方が多いのでしょうか?それとも、何か作っておられる人ですか?(今日は、クリエーター、教育関係の方が多いかと思います)分かりました、今日は、どうしたら儲かるかという話はやめておきます。

通常、私はお商売をされておられる方を対象に、どうやって事業を進めていくのか、どうやってアマゾンと戦っていくのかというようなお話しさせていただくことが多いのですが、今日は、少し流れを変えてお話をさせていただきます。

洞本昌哉、1969年生まれ、50歳です。本当は、僕も大谷大学で働きたいと思いますが、日々、阪神タイガースを応援して、一喜一憂をしています。何故、人前でしゃべれるようになったかというと大学の時に落語研究会に居たからです。北海道では、ずっと落語ばかりをしており大学には行っておりません。本屋になるために本を読むようになってから北方謙三にはまりました。妻と子供が3人おり、元銀行員(京都信用金庫)です。出版社さんが、読書を広めるために推奨している団体のJPICの読書アドバイザーをしています。養成講座を修了した人が、全国に2600名で、その内、有料会員が600名くらいで、私が代表をしています。近畿イオン同友会店の副理事を務めています。もう終わりましたが、2年間、テレビにレギュラー出演していました。本をお勧めするコーナーです。ということで、話をすることにストレスはありません。

概ね3年前に新大宮商店街で絵本カフェを始めました。今日は、何故、この店を始めることにしたかというお話をします。自転車を止めて遊びに来ていただいたり、夜に「大人が絵本に親しむ」イベントをしたり、絵本カフェをしたりしています。

絵本カフェの店主でありながら、ふたば書房の社長でもあり、26店舗の運営をしています。従業員は280名、年商は38億円から少し減らしています。本店機能は、京都市役所の地下にあるゼスト御池店に置いています。約200坪の大型店舗です。主力店は京都駅八条口のイオン側にある京都駅八条口店、最大店は尼崎のつかしん店で350坪あります。

 

 

 

 

 

 

 

もう一方で、本屋でありながらアンジェという雑貨屋を運営しており、このために全国から講演依頼があります。もう26年目になります。本店は、河原町通御池下るにあり、北欧雑貨屋としては、先駆者的な存在です。アンジェラヴィサント梅田はコンセプトから作ったOL向けのお店です。名古屋には、ママ向けのグリンストア名古屋店を運営しています。

 

 

本日の基本的なテーマは、インターネットと如何に戦うか、如何に棲み分けていくかということです。結論から言いますと、GAFAが前から来たら避けろということです。あんな巨大企業と正面から戦ってはいけません。ふたば書房は間もなく創業90年を迎える本屋ですが、雑貨屋を26年前からやっておりまして、残念ながら、本の販売は前年割れを繰り返しています。その大きな原因は雑誌です。インターネット、スマホで情報が取れますので、雑誌離れが起こっています。雑誌は、広告収入を主な収入源としています。それに対して書籍は広告収入がありません。広告がインターネットに流れることによって雑誌がダメになりました。書店は雑誌でお客さんを毎週あるいは毎月、定期的に引っ張ってきたので、雑誌の衰退とともに本屋も売り上げが減少しています。

一方、京都においては競業化が起こってきており、ナショナルチェーンと呼ばれる紀伊国屋さんやジュンク堂さんが、本来ならナショナルチェーンが出店するようなマーケットでないところに出店をしてきている。京都が大学が多いので、書籍購入費という統計をとると東京に次いで全国で2番目にランクインします。実際は、大学が買い上げをしているからなのですが、大きな企業はデータが全てなので、京都は良いマーケットだと思って出店をしてきます。私どものゼスト御池店は、紀伊国屋さんの後の居抜きの物件です。そのため、紀伊国屋さんが残しておかれた書架をそのまま活用していますので、書店開店の最大の投資となる書架代が低く抑えられ、出店コストは大変に低くなっています。

ローカルな本屋がどこに進むべきかという課題ですが、自分たちのストロングポイントを自分たちで考えるということに尽きます。皆さんも一緒です。自分たちの特徴は何か?これを一生懸命考えてください。皆で一生懸命に考えたら、必ず何かあります。本屋の売り上げが落ちてきたからこそ、雑誌に依存するのではなく単行本を一生懸命売らなければダメなんだなということが分かります。

何故、絵本カフェを始めたかというと、今、これだけ出版市場が低迷している中で、絵本だけは落ちていないことが分かったのです。全体のボリュームが減る中で、絵本の市場は落ちませんので、相対的に売り上げが上がってきています。それで、僕は、6年前に制度が始まった絵本専門士の資格を京都で最初に取りました。年間60名しか資格を与えないので、まだ、全国で300名しかいません。ですので、京都市が絵本を選ぶ際にも、私たちがお手伝いをしています。こうした気付きがすごく大事だと思っています。絵本カフェを始めた最大のポイントはそこにあります。

その前に、本を読む姿がカッコいいと思っています。皆さんがこれから起業して頑張っていかれたり、頑張っておられたりしているのとは少し違いまして、私は、本屋の息子で、3代目です。けれども、学生の頃はずっと運動をやっていたので、本を読むというのはカッコ悪い、オタクやと思っていました。体育会系に言わせれば足が速いのが一番カッコいいし、思いバーベルを上げられることに価値があります。けれども、本屋を継ぐのであれば、自分が納得するようなやり方をやろうと考えて、雑貨の販売をやってみようと思いました。本を読むことがカッコいいというシチュエーションをどうやって作るかという発想からです。オン・ザ・デスクの演出をするブックカバーや照明にこだわったり、コーヒーを飲みながらカッコよく小説を読んだり、ミステリーを読みながら煙草の煙をくゆらすことなどにこだわるために雑貨屋を創りました。東京の上野の店では、先ほどの発想と一緒で、本屋さんの中で、本だけでなく小説の中に出てきて、それを持っているとカッコいいと思わせるための雑貨を置いています。男性40代向けのワークスという店です。

これは本屋さんならではの技で、本、特に雑誌は徹底的に年齢・性別のセグメントが分かれています。この店は、40代のお客さんがすごく多いな、この店は20代のママさんが多いな、ということが良く分かります。そのお店にその年齢層に一番フィットするもの、簡単に言うとその雑誌の広告に掲載されているものを置くとすごく売れます。非常に簡単なロジックです。これは、守口にある女性30代向けの店です。これは心斎橋にある50代向けの店です。これは東京の大手町にあるドイツをイメージして作った丸の内界隈の女性向けの文房具店です。

一方で、日本にもネット販売の流通革命が入ってきた時代でもありました。Yahooの個人オークションから始まってアマゾンさん、そして、楽天さんが頑張っておられます。ネットの世界では海外から飛んできて一挙に市場を占拠していきます。弊社も雑貨屋をやり始めた時に楽天に出店しました。「インターネットの中に百貨店ができるらしい」と言っていた時代です。そう時代でしたので、弊社の取組は先駆者として評価され、楽天の雑貨部門では9年連続、1位を頂きました。けれどもネットのビジネスは一番しか残りません。そして、価格競争の体力勝負になりますので、ネット事業は早々と売却しました。このときはメルマガ戦略が一番の武器で、メルマガ会員は15万人いました。そのため時々、洞本という名前を聞いたことがあるという人に出会うことがあります。全国の会員を相手に京都の話を書いたり、お婆ちゃんの失敗談を書くなど、面白トークを入れながら、仕事だけではないメールを配信しています。そして、データを見ていると、朝、会社に着いてからパソコンを開けて、仕事が始まる前に購入される人が多いということが分かってきます。そうして、自分たちのターゲットがどこにあるかということを絞っていたので、事業としてはまずます、順調に行っていました。けれども、ネットの社会ではすべてオープンになりますので、雑貨の世界でも大手に丸ごとコピーされ、低価格で提供され、体力勝負となりすごく苦しくなります。一方、ネットの場合は、若干の固定費と売り上げに対する率だけの経費に対して、リアル店の場合は、家賃等、店舗を構えていくためのコストが発生します。特に繁華街など、どんな商売でも成り立つような場所は、家賃は簡単に下がりません。逆に百貨店の場合は、本の売り場が必要だとなれば、売れなくても本のスペースを確保され、本屋が成り立つ家賃が設定されます。

本は、定価の2割が本屋の儲けです。百貨店の家賃は、その儲けの半分です。アパレルは定価の6割が儲けで、百貨店は、その半分の3割が収入となります。そうすると、原価率が低く百貨店の儲けの大きい化粧品が1階に配置され、その上の階に婦人用品店を置きます。本屋のように原価率の大きな商品は上階のお客さんの少ないところに配置されます。

いよいよ、物のいらない時代に入ってきました。生活に変化がないと必要なものが亡くなってきます。日本の経済が伸びて来ない最大の要因がここにあります。アジア経済が伸びているのは子供が多いからです。子供が小学校に入ればランドセルが要るし、成人すればスーツは要ります。何も新しい事が起こらなければ、消費は発生しません。年齢構成が経済成長に与える影響は大きいと思います。僕らが若い頃には、こんなセミナーなんかありませんでした。遮二無二、働けという時代だったので、この時間にうろうろしている暇がなかったというのが本当のところだと思います。こういうセミナーをさせてもらうと時代は変わってきたなと思います。皆、これからの在り方を本気で考えて始めているのだろうと思います。

先ほど、物より事が欲しいのだと申し上げましたけれども、インスタ映えなどが典型です。皆が見たことが無い、皆が食べたことが無いものを写真に収めてプチ自慢したい。旅行もそうですし、本屋の関係でいうと知識欲です。皆が知らないことを知っている。例えばSDGsというバッジをつけていると、とりあえず切っ掛けになります。人に聞かれてその知識を薀蓄として語りたい人は必ずいます。

本屋を必要とする人を浮かび上がらせるためには、ターゲットを定めて、まず行動することが必要です。外れても良いです。リーダーにとって大事なことは前を向いて走ることです。スタッフにどこに向かうか伝えることです。それができると物事は動き出します。本屋さんで本を売ることが大変になってきたので、コト消費ということでは「読み聞かせ教室」や「売出し中の作家とのトークショー」をやってみたりします。

 

 

 

さらに「ふたばキッズ」といって、小学生に本物のレジ掛をしてもらうイベントで、本物のお金を扱ってもらうイベントも行っています。そうすると親戚一同で本を買っていただけます。これは、参加する皆さんに喜んで頂けて、本屋にもメリットなるイベントで、どこの店舗でも実施できます。さらに色々なワークショップも実施します。地域のさまざまな工場やお店を見学するツアーも実施します。本屋が間に入って調整すると見学を受け入れてもらえます。そうすることで地域のお客様の関心を引き付けることができます。また、見学会を実施すると店主や工場主も、何故この仕事をしているのか、何故こういう仕事の仕方をしているかを勉強してきてくれますし、励みにもなります。本店のあるゼスト御池では、毎日イベントとして年間330回のイベントを実施しました。継続しているとお客様も増えてきます。

一番大事なのは、「足元を掘れ、泉はそこにあり」哲学者であるニーチェの言葉です。自分がやるべきことは、真剣に探していくと身近にあるんです。身近にあって、その中心に自分たちは立っているのです。「隣の芝は青く」見えますが、自分がそこに立っているということはどういう事かということを良く考えると自分のやるべきことが良く見えると思っています。このニーチェの言葉に即して、何故、弊社が絵本屋をやっているかというと、マーケットが縮小してきて初めて、絵本の市場は縮小しないというということが分かったので、絵本はいけるだろうと思いました。そして、言葉少なく行間を読む日本人は、絵を見て文字を見てその間を勉強することに長けていますので、最近は子供だけでなく大人のお客さんが非常に増えてきています。子供の頃に読んだ絵本を大人になって読むと、改めてその絵本がしみじみと分かってきます。そういう事を世の中に広めて行けば、絵本のマーケットは子供だと思っているから手を出さなかった本屋が実績として縮小していない市場であり、もう一度広げることができるなら、大人から子供まで幅広い世代に遡及できると考えて、絵本屋をやっています。

そして、絵本専門士、JPIC読書アドバイザーは全国に仲間がいます。今、私がやろうとしていることは全国の仲間に絵本屋になってもらうことです。これがふたば書房のビジネスです。北区の新大宮通りで絵本屋をやっている理由の一つは僕がこの界隈の出身であり、地域のことをよく理解できるからです。もう一つは、人が少なく立地環境の悪いところで絵本ビジネスが成り立ってこそ全国で展開できると考えたからです。全国の仲間にこのビジネスは成り立ちますよ、精神衛生上良いことをやっていると言えます。これが成功すれば、全国に500店舗、絵本屋ができます。その為の一号店でもがき苦しんでいます。

それから、僕自身が絵本専門士ということで全国から絵本カフェにお客様に来ていただけます。京都観光のついでに来てくれています。そのお客様たちの期待に応えるために、自分自身に課していることは、土曜日だけは絵本カフェに絶対に居るということです。そうすると、その人達は、土曜日をめがけて、予約を入れて来ていただけます。そんなに人が集まる立地でもないのに、インターネットでもないのに広域の人たちと連絡が取れて、商売ができるようになります。全然儲からないけどめちゃくちゃ面白いです。商売は、儲かるからやるのではないように思います。50歳になったからわかることかもしれませんが、面白くないと継続できません。逆に儲からなくても面白ければ継続できます。多少儲かっても嫌なことは止めます。そこはとっても大事なところだと思います。皆さんのおやりになることが、ニーチェの言葉にあるように、先ず自分の足元を見て、自分がここに立っていることが合っているのか見極めた上で、立っているところをしっかりと見て、その周りを掘って欲しいと思います。

少しお話が長くなりましたけれども、私が今、やっていることは以上です。後は、意見交換の中でお答えしたいと思います。ご清聴、ありがとうございました(拍手)。

 

<意見交換>

赤澤)基本的なことですが、絵本専門士の資格とはどのようなものでしょうか?どのようにしたら資格が取得できるのでしょうか?

洞本)絵本専門士は、著作権の問題を含めて絵本の可能性を広げていくために国の外郭団体である独立行政法人 国立青少年教育振興機構が養成から資格付与まで行っています。アジアの絵本市場は、まだまだ未成熟なので、漫画のように過去の日本の絵本作品の吹き出しの言葉だけその国の言語に置き換えて輸出されています。世界を席巻した漫画のように絵本を輸出することは国策の一つになっています。そのためには、日本の絵本の土壌をしっかりと支えることが必要です。そして、子供達にしっかりと絵本を読ましてくれる人を育てることが必要で、絵本専門士の仕事とされています。毎年60名、今年から70名の資格者が生まれています。そして、今年の応募者は1,400名でした。

選考方法ですが、エリア別、職種別、キャリア別、年齢別に選考します。意図は、全国から万遍なく、色々な職種、キャリアの人を選考したいという事です。2日間の講義ですが、東京でしか開催されません。けれども、東京の人は応募者が多いので極端になりにくい状況にあります。北海道や沖縄の人は、わざわざ旅費を使って東京まで行く必要がありますのでなり手が少ない状況にあります。それから男性が比較的なり易い。絵本の世界は圧倒的に女性の人たちが多いので応募者が多くなります。職種では本屋さん枠、問屋さん枠、出版社枠などがあり、それらのジャンル毎に均等に選考されるように割り振っています。本当に狭き門ですが、試験はありません。論文で、今までどのような絵本活動を何年やってきたか、絵本専門士になったら、その地区でどんなことができるか等を記述します。300名の絵本専門士の内、ラインで190名がつながっているまとまりのある集団です。同じ志を持つ人は近寄ってくるということを感じています。絵本のマーケットに注目していただければ、皆さんのお仕事に少し役に立つんじゃないかなと思っています。来年からは、いくつかの大学で絵本専門士の資格申請に必要な条件の一部免除ができる講義が始まります。さらに、絵本専門士の次に位置づけられる資格認定も始まります。注目されており、いつか国家資格になったら良いなと思っています。

 

赤澤)ふたば書房のツイッターを良く拝見していますが、本屋のオフィシャルなツイッターとは思えない内容です。書き手の個人的な感情や思考が表れているように思えて、面白いなと思っています。あれは、誰がどういう風に書いているのでしょうか。

洞本)当番制で書いたりしていますが、ターゲットは絞って、年代・性別を限って書くようにしています。それぞれ担当が決まっていて、その辺をうまく合わせて掲載しています。これはSNSの特徴なんですが、漠然としたことを書いたり、きれいごとだけを書いていると、誰も見てくれません。最終、売上につなげようと思うと、ピンポイントで打ち込んだ方が効果があります。社員教育の意味も含めて、そこをめがけて書いてもらっています。だから、皆さんから今日のツイッターは面白かったな、というコメントを頂くことがあります。

 

赤澤)書かれている内容も興味深いものがありますが、どんな人が書いているのかなということがすごく気になります。

洞本)先ほどのアンジェのwebサイトもメルマガで情報発信をしてきたこともあって、とても大事にしており、私自身が書いています。もちろん、分担することもあります。

 

赤澤)コミュニケーションを作る形で内容を選択されているなと感じています。

洞本)弊社の特徴です。社長がこんな人なので公式なことはできません。皆さんがカチッとしておられるとカチッとしてないものが生き残ります。

赤澤)ちゃんと整っているメルマガは誰も読まないですよね。フォーマットがあるものは流して読みますが、ひっかかるものが多いものは、思わず引き込まれます。

 

寺田)先日、久しぶりにゼスト御池店に寄ってみると、絵本や児童書のコーナーがずいぶんと大きくなったなと感じました。顧客の多くが勤め人のようなゼスト御池店で、誰をターゲットに何故、絵本・児童書コーナーを広げられたのかお聞かせください。

洞本)少し大きな話からすると、イオンが伸びたポイントは安全なんです。絶対、車が来ない。子供さんを連れて行っても大丈夫というのが、今後のキーワードなんです。特に京都の街中、田の字地区の新京極や寺町は車が走りません。車が走らないところは杖を突いている高齢者もベビーカーを押しているお母さんも安心できるんです。買い物で安心できるということはとても大事です。この新大宮商店街に出店したことは本当に正しかったかどうかということは微妙ですけれど、一方通行で歩道のあるコミュニティ道路にして安全を確保しようというのが行政の考え方だったのです。それを考えるとゼスト御池の地下街は、車が絶対に通らないという安心材料があります。安心感を求めている人達が来るかもしれないということと、駐車場が真横についているのでベビーカーがぎりぎりまで付けられます。なので、そこをターゲットに意識的に絵本や児童書のコーナーを広げています。出版社や問屋さんからは大反対がありましたが、今となっては正解でした。多くのママさんに来店いただきますし、私が資格を持っているので、そこでご相談をさせていただいています。弊社としては成功事例です。

 

渡邊)お話、ありがとうございました。感動しながらお聞きしていました。紀伊国屋さんの後に居抜きで入ったお話がありました。石巻でもイオンの前にローカルブランドのスーパーが整備されて、そっちの方が売れているという状況があります。そういう意味で、ナショナルブランドといわれているものは結構、落ち目なのかなと思っています。そういう中で、紀伊国屋さんと比べてふたば書房さんが優れているところは何だと思われますか。

洞本)自分でいうのも変ですが、そういう意味では本屋は特殊です。本は、どこで買っても同じ価格で価格競争をしなくても良い業態です。イオンさんとローカルブランドのスーパーを比較すると、鮮度は圧倒的にローカルブランドが有利です。イオンは、東京が配送センターなので、石巻で取れた魚も一旦東京へ行ってから石巻の店に配送されます。ということを考えると、ローカルブランドのスーパーでも、たった今、船から上がった魚ですと鮮度を前面に出して上手にマネジメントすると、十分に生きる道があると思います。僕が知っているイオンさんでも苦戦しているところは一杯あります。ふたば書房が何故、経営できているかというと、価格競争ができないということになると、よりお客さんと近い距離間でいるということが一番、大事になります。いつ行ってもあの人が居るなというのがとても大事です。大手の本屋さんはサラリーマンなので、3年から5年すると転勤します。そうするとお客さんとの関係は希薄になります。だから、最初からお客さんと仲良くしないで、マニュアルどおりの四角四面の応対をしたりします。例えば、ふたば書房の店員は、5個入りのたい焼きの内、3個をもらったりします。お父さんと一つずつで十分なので残りは上げるというわけです。普通はお客様から物を頂いてはいけないのですが、ふたば書房の社員はもらいます。そういう事もある程度、良しとしてあげると地域との密着度合いが上がっていきます。今、全国でいうと、イオンに飲み込まれたブランドであるダイエーさん、サティさんは大苦戦をしています。それは、サティさんはサティさんの付き合い、ダイエーさんはダイエーさんの付き合い方で取引御者と付き合いをしていましたが、全部、ダイエーさんと同じ付き合い方、少しきつめの付き合い方をすることになり、今までの取引先から全部切られています。イオンそのものもしんどくなっているのは、分母は大きくなっていますが、付け加えて行ったところがどこも稼げていない。全部がイオンブランドになるまでに時間がかかるからです。ということで、ナショナルチェーンで図体が大きくなると苦しくなります。その意味ではふたば書房では転勤と言っても隣の駅に行くだけです。店長と共にお客さんが移動するということもあります。その辺はローカルブランドの強みで、特に趣味趣向に分かれているところがふたば書房の強みかなと思います。

 

寺田)今のお話では店員さんのクオリティが決定的なように思いました。どのように採用しておられるのか、採用の基準があるのでしょうか。本が圧倒的に好きだとか。

洞本)採用基準は、僕と仲良しだということです(笑い)。もちろん本に詳しいということは求めていますが、あくまで我々は商売をしているということを忘れていないことが大事です。僕が店に行って怒ることがあるのはそういうところです。本が大好きすぎてお客さんを後回しにするということは、ちょっと違うのではないかと思います。100の内51はお客様のため、49は専門家でありなさいと話をします。そこをはき違えないこと、そこだけですかね。ふたば書房は新卒は一切採用しません。全員、アルバイトさんからです。本屋は儲からない上に売り上げが落ちているというどうしようもない状況で、それでも居てくれるのは、とても本が好きだからです。新刊に日々、触れていたいからです。店長さんが大して良い生活をしていないということを良く知っています。それでも社員になりたいと言ってくれるのであれば、一緒にやろうかということになります。今、スタッフ280名の内正社員は60名で220名はアルバイトですが、元々は全員アルバイトです。スタッフとは仲良しです。お菓子を分け合います。たい焼きのしっぽを誰が食べるか話をします。

 

寺田)売ることに熱心な会社に勤めていて、それがストレスとなって会社を辞めて、自分のやりたいことを始め、足下を掘っている人が西陣R倶楽部には沢山いらっしゃいます。お聞きしていると本屋の店員さんもそれに近い人でないと務まらないと思いました。

洞本)あるジャンルを掘っていくと、どんどん深いところに入っていきます。掘れば掘るほど広がっていく感じがします。そして、それぞれが面白いです。皆、ケラケラと笑っているわけではありませんが、楽しそうに仕事をしてくれているので、それはそれでいいのかなと思っています。お金儲けとは真逆のところに行く感じはします。そんなんでええのと思いますが、それでも皆、毎日楽しそうに来てくれるので良いのかなとは思っています。本屋さん良いですよ、本屋さんやりませんか。

これは、先日、発売されたマガジンハウスのアンドプレミアムという雑誌です。全国で20,000部、1,500円で販売されています。この一番最初のページは、何と大徳寺です。我々、京都に生まれ育った人間からすると、なんで大徳寺やねんというところですが、全国の京都好きの人たちは、やっぱりマーケットをちゃんと見ています。絵本カフェをやっていても、土日はすごく地方の観光客の人が歩いています。何が面白いのかと思うのですが、中にいるから分からないのです。外から見るとすごくいいところをいろいろと教えてもらえるというところもポイントなので、自分たちもこの町を大事にした方が良いな、もっと掘り起こした方が良いなという風に思います。それと、本屋さんは、儲からない代わりに安全なのです。これ、1,500円の本ですが、仕入れが8掛けだから1,200円で問屋さんから買います。そして、皆が回し読みしてボロボロになっても1,200円で返品できます。そのかわり、本屋が問屋さんと口座を開設する際の審査が大変です。絶対信用できる人、売るために努力してくれる人が求められます。本が大好きな人たちが世の中には一杯いるので、そういう人達が我々の本を売るというところのお手伝いを頂けるのであれば、弊社から本を貸してあげるということは可能です。2次卸といいます。通常、問屋は本屋に対して毎月500万円の売り上げを求めます。これは素人では無理です。けれども、自分が本が大好きで人にも勧めたい。そして多少は収入も得たいというのであれば、本屋の2次卸を活用することが考えられます。アマゾンにレビューを書いたら一定割合のバックがあるというのと同じような形です。そんなことでやっていけたら、色々なお商売をしながら、その一角で絵本を売ることもできます。それで、とりあえずやってみて、だめだったら止めたらいいんです。返本してよいという商売ですから、その意味でのリスクはありません。ですので、本屋は儲けようと思わなかったら面白い仕事です。

 

西尾)ありがとうございます。とても楽しく聞かせていただきました。クレヨンハウスさんのように、定期購読をして毎月届くというお商売がありますが、そういうところとは競合しないのでしょうか。

洞本)クレヨンハウスさんは、年齢にふさわしい絵本を選んで毎月、家まで送ってくれますが、我々は現物を見てもらっているということが大きく異なります。そして、あんまり子供さん向けに売っていません。一番、多く買っていただくお客様は保育園の先生です。それから、これから読み聞かせをやりたいシルバーの方です。それからギフトです。そっちの方が本屋をやっていて面白いかなと思っています。本屋の絵本・児童書コーナーは、大人は入っていきにくいですよね。そういう意味では、絵本カフェは大人の人が来てくれる設えになっており、実際に絵本を手に取って見ていただけます。いい大人が絵本を見ていても誰も何も思いません。

 

寺田)洞本さんとはこの後、予定しているフリータイムで直にお話をしていただく方が面白いと思いますので、意見交換の時間はここまでとさせていただきます。最後に大きな拍手で洞本さん居感謝したいと思います(拍手)。

 

<報告 合同会社 巻組 代表社員 渡邊 亨子氏>

ただいまご紹介いただきました。石巻から来ました、有限会社巻組の渡邊です。私は関東の出身で、2011年までは東京で学生をしていました。大学院の1年から2年に上がるときで、就職活動もうまくいっていない時に、東北大震災が発生し、宮城県の石巻市に行きました。死者、行方不明者数が4千名で、全壊家屋2万2千戸という大きな被害を受けた町でした。そういう悲惨な状況を見て、何かやれることが無いかなと思って石巻に行きました。石巻は元々、商売人の方が多い町で、その方たちが熱心に活動されているのを見て、私も何かお手伝いができないかと思いました。そして、デザイナーの方たちとチームを組んで事業を始めました。

石巻には1年間で28万人ものボランティアの人たちが入りました。被災3県で90万人の人が移住してきたと言われています。2014年から地方創生が言われ始めましたが、残念ながら地方から人口が流出している中で、この数字は凄いことだと思います。石巻でも22,000戸の全壊家屋があり、被災者の方ですら住むところがないという問題がありました。不動産屋さんに問い合わせても内見すらさせてもらえないという状況でした。そうしたところで、被災した空き家を買い上げたり、借り上げたりして、自分たちでDIYで改修して運用するという事業を始めました。そのうちに、市街地に復興住宅が3千戸建設されましたが、家はできても人は戻らないということが続き、逆に空き家が増えてきました。震災当初は借り手がつかなかった空き家を仮設住宅として利用してきましたが、新しい住宅ができるとそういうところからどんどんと人が出て行ってしまうのです。接道も不十分で老朽した空き家は壊すしかないんですが、解体費用の負担ができないので、只でもいいから使ってほしいというということになってきました。22,000戸の住宅不足が今や6,000戸以上の空き家が生まれ、人口減少が続いているという状況にあります。そこで、家だけを作ってもしょうがないだろうということで、住まうコンテンツを作っていかなければならないと目覚めました。そして、若い人たちが空き家を使って面白い事業を始めてくれたらいいんじゃないか、家自体の良さを生かして運用できないかなと考えました。

先ほどの洞本さんのお話に共感したのですが、儲かることとか社会に役立つことだけではなく、やっていて楽しいと思えることを大事にしていきたいなと思っています。少し、具体の事業をご紹介します。石巻の中心市街地には今でも下水が通っていないところがあります。そして、築5~60年位の接道していない老朽した住宅があります。こういう空き家を楽しくDIYでコストを抑えて改修します。床が抜けていたらそれを逆手にとって抜けたまま土間的に利用したりします。こういう家にすむ人がいるのかと良く言われますが、意外といます。私たちの会社は4人位の小さな会社なので、そんなに大きなマーケットを狙う必要はないのです。そんな家にすむ奴いないだろうという家でも、一人でもそこに住んでくれたらいいんです。例えば、土間付きの家なら、陶芸家とかアーティストが展示会なんかを開きながら住んでくれたらいいよね。ということを考えています。そんな人って石巻に居るわけないだろうと言われますが、一人いれば、その人に続く人が出てきます。ニッチな市場を作って、後に続く人をどのように作っていくかが大事になります。例えば、バックパッカーをしていた青年でインドでカレー屋さんに助けられたから、カレー屋をやりたいという入居者が現れたりします。彼らは友達をいっぱい連れてくるので、次々と面白い若者が入ってくれます。女性の写真家だったり、シンガポールの起業家、元レーサーだった女性などが入居してくれています。

自分が納得した生き方ができるということがこれからは大事だと思っていて、なにかチャレンジしたい人が始められるようなコンテンツ自体を作っていきたいなと思っています。そのために、事業を支援したり、そういう種になりそうな学生を集めたりしています。今日も、京都の学生さんのリクルートに来ました。

これから地方の空き家は只でももらって欲しいというニーズがどんどんと増えてくると思っています。そういう家を、私たちが安く買い上げたり、借り上げたりして運用することによって、何か変な人たちが住めるという社会は幸せなのではないかと思っています。そういう方が周りにいらっしゃいましたら是非、ご紹介いただきますようお願いいたします(笑い)。

 

寺田)そういう、少し変わったことをやってみたい人は是非、石巻に行ってみてください。急なご報告を頂き、渡邊さんどうもありがとうございました(拍手)。