植物園北側の賀茂川沿いの趣のあるアパートの1階にひっそりと梟文庫はたたずむ。一歩中に入ると、DIYで仕上げた漆喰壁と図書たちが作り上げる柔らかな空間が広がり、いつもにこやかな西尾さんと共に色々な立場の人々を優しく包み込む。

東京から京都へ看護師から居場所づくりへ

東京都心のマンションで、地域活動とのつながりがない中で育ち、15年前に結婚と共に京都に転居する。京都に来て地域コミュニティが活発であることに驚く。最初は下鴨に居住し、10年前に子供が生まれて上賀茂に家を購入して転居する。夫婦共に京都の人間ではないので何も知らずに来た。葵祭の神輿があり、歴史のある中で新しくもある良い地域だなと思っている。

京都に来る前は精神科の入った病棟で看護師として勤務していたが、京都に来てからは、地域で生活している精神障害のある方々が日中通うデイケアという施設の看護師として働く。そうして働く中で、精神障害がある方もそうでない方も含めて、色々な方が地域の中で集える場所があったら良いなと思っていた。

自身も子育てをしていて、大人と子供の垣根のない場所があまりないなと思っていた。障害があるとかないとかいう区別されている現状があって、そういう区別が無い場所が地域の中にあると良いなと思っていた。もう一つは、この取り組みを始める前に、京都府立医大大学院の保険看護研究科で精神看護の研究を進めていく内に「居場所」と言われている場所がどんなふうに成り立っているかということについて関心を持ち、記述的に研究することになる。看護からは少し離れたテーマで、最初はデータを集めて居場所を表現しようとしたが難しかったので、いろいろと模索をする中で大阪大学の先生に出会い、現象学的手法で修士論文にまとめ、自らも居場所を作ろうと思うようになる。

最初は様々な人が立場を越えて集える場所を作ろうと考えていて文庫はそのための手法として後付である。元々、本も好きでたくさん持っていたので、私設図書館として開設することとした。

 

梟文庫の開設

廻りの方々に居場所づくりの話をしていたら、知人の好意で現在の場所を借りられることになり、梟文庫は実現に向けて動き出す。

部屋の改修など1年間の準備期間を経て2016年5月に看護師を退職し梟文庫を開設する。古い建物の改修工事を得意とする方にお願いし、できるところは自分たちでやらせてもらう。板張りの床は大工さんにお願いし、漆喰の壁は自分たちで塗ったりして時間がかかる。改修費用は自己負担である。

スタートしてから、ワークショップを開いたり備品購入費などは助成金を頂いた。北区役所のまちづくり提案支援事業では、広報用のチラシや毎月の文庫たよりの作成費用に充てさせてもらっている。

運営に際しては家族を始め多くの方のサポートを得ている。夫は教育心理学の大学教員で幼稚園や保育園、小学校の先生を養成する学科で働き、子どもの教育に関心と熱意を持つ。中学性の娘さんもアクセサリーのワークショップの講師として活躍する。その他に、梟文庫の活動に賛同する講師の先生方が、梟文庫でワークショップを開催している。ワークショップの開催実費は参加費で賄い、社会福祉協議会からの助成金からわずかの謝礼を支払っている。講師の先生方も全くあては無かったが、徐々に増えてきて、今では和菓子、自然科学、手芸は毎月1回は実施してもらっており、加えてアートなど様々な講師の先生が開催する。講師はご近所の方で保護者繋がりの方が多い。

梟文庫は、平日に来館する方が少なく、主に土日祝日を中心に開館しており、ワークショップも土日祝日の開催が中心である。また、自身は、梟文庫の他に子どもたちの学習支援の活動もしており、梟文庫では毎週水曜日に小学生を対象にICTを使った学習支援の場としても活用し、同日は、図書の貸出・返却のみを行っている。

5月の開館記念イベントして、隣接する公園を使って子どもたちが販売するお店屋さんごっこをやっている。ダンバール一箱の店が20店舗ほど出店し賑やかである。実際に売り買いが行われ、輪投げなどのワークショップも行われる。

小学生の来館が多く、親子連れの乳幼児など子育て世代の方が多い。高齢者は希にワークショップに参加していただく程度で、もっと増えて欲しいと思っている。一日の来館者は十数名である。

広報に関しては、当初から前月のイベント概要と翌月のスケジュールを記載した「梟文庫のおたより」を作成して、友人ルートで各所に置いてもらっている。その他に、ホームページ、facebook、インスタグラム等のSNSを使っている。

基本的に会員制にしており、オープンして約4年間、会員数は約50名前後で推移している。少しずつ新旧が入れ替わりながら、リピーターの率は高い。会費で家賃や水光熱費など基本的な費用を賄っている。子どもの会員登録は任意で賛同する保護者の方にはご負担をお願いしている。ふらっと来て本を読んで帰る子どもが居ても良いと思っている。来館者は近隣だけでなく、京都市内一円から来ていただけており、車での来館者も居る。

 

今後の梟文庫と西尾さん

図書の充実とか図書館機能に関してはまだまだこれからの課題である。昨年から京都市子ども文庫連絡会に入って少しずつ学んでいる。今年、いただいた助成金で図書の充実を図ることとしている。その際、選書をしっかりとして独自性を出していきたい。

11月には北区のまちづくり提案支援事業からの助成で「性教育のワークショップ」を東京のアクロストンと共同で開催することとしている。小学生から中学生まで発達段階に合わせて3回開催する。学校ではNGワードなどの制約も多くてできないワークショップとしたい。これに合わせて性教育に関連した図書も購入する。この時には西陣R倶楽部の会員でもある「絵本カフェめばえ」さんに協力をお願いする予定にしている。自身の関心領域である人権やケア、教育等をテーマにしっかりと選書をしながら皆に紹介できたら良いなと思っている。自分の体を大事にしながら相手の体も大事にするということが人権教育につながると思っている。

梟文庫の閉館日には自宅で障害のある子どもの学習支援をしたり、学習に躓いている子どもの家庭教師に行ったりしている。看護師の時代から発達障害に関心を持つ。大人の発達障害を考えると子ども時代からの支援がすごく大事で、発達障害のある子どもさんの学習支援が大切だと考える。個人的にお引き受けしている子どもさんがほとんどであるが、発達障害の子どもの家庭教師の派遣を専門にしている組織に登録して、その組織からの派遣で教えに行ったりしている。

看護からはどんどんと離れているように見えるが、自身の中では同じ価値観でいる。自分のことを知って自分に合ったやり方で勉強にしても生活にしても工夫していったら楽になるのではないかという思いで、子どもの学習支援を始めるようになった。

昔は、少し違う子どもでも仲間として一緒に学び、遊んでいたが、今の時代、同調圧が強く、少し違うと集団からはじき出され、生きづらくなる傾向にあり、苦しい子は大変だろうなと思う。

今後は、今年始めた性教育のワークショップを継続していったり、本の選書を進めて、学校ではタブー視され学びにくいことを、あえてピックアップしてやっていきたいと思っている。

店名 梟文庫
名前 西尾 美里
住所

京都市北区上賀茂今井河原町10-71 五松マンション13

電話番号
営業時間 土日祝日、水曜日 13:00~17:00
定休日 不定休
webサイト https://www.fukuroubunko.com
その他

Email:fukuroubunko.kyoto@gmail.com
Facebook:梟文庫
インスタグラム:fukuroubunko
会員制 <一般会員:施設利用>個人:1000円/年、家族:2000円/年、<正会員:相互扶助コミュニティ>個人:2000円/年、家族:3000円/年