有限会社 織匠平居 代表取締役 平居 幹央氏

緯糸に金糸を織り込んで文様を表現する法衣金襴を扱う伝統工芸士として、伝統に拘りながら新しい業態を展望する。

 

<五代目>

明治初期に京都にジャガード織機が導入された頃に初代が創業し5代目に当たる。当初は帯の裏地を織っていたが、戦後、3代目の祖父の代に金襴を織るようになった。ずっと金襴を織っていた祖父の友人の勧めで金襴を織り始める。

「これからは帯の時代ではない。金襴を始めたらどうか」と言って織屋さんを紹介してもらう。最初は、織屋さんの出機として始め。しばらくしてから、その織屋さんに「直接、問屋と取引しても良い」と許されてから現在の業態が続く。戦後、どんどんと着物離れが進む状況を見ていた上での判断だったと思う。主として僧侶の袈裟用の生地を手織りで織る。袈裟も用途によって幅も長さも異なる。加えて平居では、袈裟の生地を縦に断つことがあるので裏もフノリで抑えて糸がほつれないようにしている。

 

5代目は、23歳の時にこの道に入るが、元々は旅行代理店に入って海外で現地ガイドの仕事がしたかった。そのため、21歳で北京語言学院中国語課に入学し1年間、中国語を学ぶ。そこで知り合った友人が佐賀県の伊万里焼の八代目であり、彼から金襴の仕事を継がなければならないと昏々と説得されて金襴の道に入る。織物が好きで、織物がやりたいから跡を継いだ訳ではない。中国に就学する3年前に天安門事件が起きて、中国での暮らしや日本との交流などは難しいものがあったが、中国留学から日本に帰ってきてしばらくして中国ブームが始まり、中国への旅行ニーズが高まり始めたので、そのまま旅行代理店で仕事をしていたら忙しかっただろうと思う。いまでも外国に対するあこがれがある。

中国から帰国した1992年から父と祖父に就いて仕事を覚える。織ること自体はそんなに難しくないが、首から懸ける部分に寺紋を入れる位置を左右で合わせることが難しく、感覚で位置を合わすことができるようになっているには相当の経験を必用とし、今でも学びの途中だという認識がある。仕事を始めたころは、とにかく仕事が忙しく注文が絶えることが無く他のことを考える時間は無くひたすら仕事をして、2008年に伝統工芸士となる。

<手織り金襴の新しい世界に向けて>

時代の趨勢で外に目を向けるようになる。まだまだ、模索の段階ではあるが、金襴以外の仕事をしている人たちとの交流や出会いは楽しくもある。その出会いがどのような変化を生むか、新たな繋がりが生まれるかは未知数である。手織りの金襴という素材自体が世間で広く認知されているとは言えないので、それを知ってもらうことからのスタートであると考えている。

どこをターゲットにどのようなモノを作るかが課題であるが、手織り金襴は高価であり、いわゆる富裕層がターゲットにならざるを得ないと考えている。

工房見学は西陣織工業組合からの依頼で以前から行っていた。オープンに始めるようになったのは3年くらい前に、みやこめっせの伝統産業ふれあい館が立ち上げた工房コンシェルジュという企画に参加してからである。今は、色々な展示会に参加するなどして手織り金襴の素材を知ってもらう実績作りを続けている。

しかしながら、平居としては裂を売りたいのであって小物等の商品の製造販売などは考えていない。裂を織ることはプロであるが新商品の企画や販売はプロではないので、安易にモノを作ってしまうと在庫だけ抱えてパンクするという状況が目に見えている。あくまで金襴という素材を知ってもらって、どのように使うかはお客様に委ねたいと考えている。

 

  1. <織匠平居の今後>

また、平居で織れる範囲が決まっているので、お客様からオーダーを頂いても平居で織れないというケースも少なくないと思っている。その場合は、同業者に仕事を振ることができるし、値段が合わない場合は、機械織りの金襴業者を紹介することもできる。そうすると全体が少しでも潤うのではないかと思っている。そういう意味では、本業以外では問屋的な仕事ができればなと思っている。

本業以外の業務で受注するようになれば、別ブランドの会社の立ち上げが必要になると考えている。金襴もいろんな分野に分かれているので、それらを適切にマネジメントしてお客様の要望に応えられるようにしたい。法衣の他に、表装、人形裂、和装小物に使う裂地などである裂地などである。この中で手織りは法衣だけである。表装は機械織り、人形裂は価格の低い高速機械織りである。

本業では、いまだに生糸の状態を良くするために「埋め機」といって土の土間に織機を設置し、気温、湿度の状況に応じて水打ちをして絹糸に適度な漆器を与えたり、昔ながら紋紙を使って織機を動かすなど、誇りとプライドも持って仕事に取り組んでいる。

 

店名

有限会社 織匠平居

名前

代表取締役 平居 幹央

住所

京都市上京区小川通寺之内下る的場町551

電話番号

075-431-0610

営業時間

9:00~18:00

定休日

日曜、祝日、第2土曜日

webサイト

https://www.kyotoartisans.jp/2016/01/25/織匠平居

その他

工房見学:要予約(2日前まで)