第8回 西陣R倶楽部 話題提供 「ミライブラリ」「放課後等デイサービス」

第8回西陣R倶楽部
話題提供1 民間学童保育 after school「ミライブラリ」 村上弘氏
NPO法人SOWERS 代表理事
話題提供2 放課後等デイサービス 代表 坂口 聡氏
一般社団法人くじら雲 理事
日時:平成30年10月15日(月)午後7時~午後8時10分
場所:TAMARIBA

<会長挨拶>
この西陣R倶楽部の交流会も8回目を迎えますが、先日、西陣大黒町にある渡文が所有していたちきりや工場跡に整備された株式会社テムザックの中央研究所を拝見してきました。この場所は、今から27年前に西陣活性化モデルプランを作成した対象地でした。その当時、私はイタリアから帰国して国連地域開発センターで勤務していたのですが、京都市の産業観光局と住宅局の共同事業で西陣を再生しようとする大きなプランの策定委員会に参加しました。その後、時間はかかりましたが、石畳も整備されて町並みが綺麗になりました。あの当時から西陣のようなところに世界の先端企業が進出して来ると指摘していました。イタリアのミラノやボローニャでは再整備された歴史的市街地に先端企業が進出してきていましたので、京都の西陣でもそういう時が来ることを確信していました。4半世紀経過して、人とロボットの共存を目指すテムザックの進出を目の当たりにすると、何とも言えない感動を覚えました。
思い出すと、あの、ちきりやの工場跡でこの会の会員でもある妙蓮寺の佐野住職や写真家の小針さん、建築少年の馬場さんたちとたき火を囲みながら、お酒を飲みながら秋の夜を過ごしていました。あの工場跡が本当に綺麗になったこと見て感無量だったわけです。
こうした先端企業の進出は、今日、お話ししただくお二人のように子育て環境を創造的に整えていく取組などがバックボーンとして存在する地域ならではの動きです。今後、北区役所の方々にもお願いして、皆さんと共にテムザックに伺って、交流するような機会を作りたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

<話題提供1 民間学童保育「ミライブラリ」村上弘氏  NPO法人SOWERS代表理事>
最初に自己紹介をさせていただきます。特定非営利活動法人SOWERSの代表をしています。現在、34歳です。元々、京都市出身なのですが、大学の時に、京都YMCAでボランティアリーダー、ユースリーダーをしていました。このことが、子どもの世界に入るきっかけとなったわけです。こう見えて、他人に対しては心を閉ざすというか、覚めた人間だったのですが、何を思ったのか子どもたちと関わろうと思いまして、京都YMCAに入って子どもたちと毎月野外活動に行ったり、1週間くらい九州を旅するキャンプに行ったりなどするうちに、子どもたちに心をこじ開けられて、今に至っています。大学を卒業すると同時に京都YMCAは卒業しましたが、YMCAからは抜け出せず、神戸YMCAに就職して、児童館や保育園に勤務していました。他にも野外活動やスキーキャンプの引率などもやっていました。その時に、東日本大震災が発生し、その支援タスクというチームに入って活動していたことが転機となりました。宮城県南三陸町の被災した子どもたち向けのリフレッシュキャンプを実施する機会がありました。大学生のボランティアと一緒に現地に入って現地の子どもたちと活動をすることになりましたが、正直、どうしようかと思っていました。南三陸町の子どもたちは、僕らが想像もつかないような辛い経験をしているわけで、どんな声掛けをしたら良いのかとか、一緒に行った大学生たちもすごく感受性の強い時期で、その子たちも大丈夫だろうかとか、いろんなことを心配しながら行きました。結局、行ってみて何もできませんでした。掛ける言葉がないという中で、子どもたちはどうしているかというとすごい笑顔で関わってくれたのです。無力感を感じまして、子どもたちに自分ができることは何なんだろうと意識するようになりました。独立して、自分でできることを探していこうと思うようになったのは、ちょうどその頃のことです。それから、しばらく神戸YMCAで働いていましたが、退職して京都に戻り、2年間ほど独立の準備をして今に至っているという状況です。

今年の4月から大宮通寺之内上るで民間学童保育「ミライブラリ」を運営しています。現在、30名弱の子どもたちが登録をして、放課後に来てくれています。「ミライブラリ」という名前は未来(ミライ)とライブラリーを掛けた言葉です。子どもたちの未来につながる可能性がいっぱい集まる場所という願いを込めてこの名前を付けています。民間とはいえ学童保育ですので、軸となるのは、放課後の小学生の子どもたちをお預かりするという活動になります。月曜日から土曜日まで開けており、休業日は日、祝日と年末年始で、他の児童館と変わりません。開業時間は、放課後から19時半までです。私たちの保護者の方に向けたメッセージは、「保護者の方の毎日に寄り添う学童保育を」としています。このため、料金体系も日額と月額の二つのコースを用意し、入退室時に保護者の方に連絡メールをお送りするシステムを導入しています。また、気象警報発令に伴う休校時の受け入れを行ったり、宿題サポートを行ったりしています。けれども、近年の暴風警報はこれまでとは違って、被害規模が大きく、私たちも慎重に考えています。

学童保育という軸を持ったうえで、ミライブラリが大事にしていることが毎日の多様な体験プログラムです。クラフトであったり、アートであったり、サイエンスであったり、土曜日や学校休校日には外に行くことも多々あります。月初めに保護者の方に体験プログラムのスケジュールをお配りしており、ホームページにもアップしています。毎日、来る子どももいれば、体験だけに来る子どももおられます。平日の放課後は、学校から帰ってきて、おやつを食べ、宿題をして、午後4時くらいから約1時間のプログラムを行っています。土曜日など、時間がたくさん取れる日は、一日かけてプログラムを実施しています。例えば、アートプログラムでは、表現手法以外は何も決めずに自由にやるということを大事にしています。最初は、子どもたちもどうしてよいか分からずに、ポカンとしていますが、今は、始まった瞬間に飛び出していきます。落書きアートでは、部屋一面に模造紙を張って、そこに好きなように表現をします。絵具も、墨が結構面白くて、白黒だからこそ表現できるものがあったりします。この写真では、普通に絵がたくさん描かれている状態で白い余白が残っていますが、この後、すごい光景になっていきます。ある意味、カオスの状況となりますが、子どもたちも顔面墨だらけになりながら最後まで楽しそうに取り組んでいます。一応、服が汚れないようにカッパを着せています。次は、クラフトプログラムです。一見、子どもたちには難しそうに見えますが、積極的にチャレンジしています。この半年間で、子どもたちのできることを信じ、できないことを見極めた上でこちらもサポートすると、結構いろんなものができることに気付きました。ほとんどの子どもが1年生で、凝ったものは難しいかなと思っていましたが、敢えてチャレンジしてみたところ、意外と何でもできることが分かりました。粘土細工のジオラマや木工工作のビー玉迷路、毛糸の手編み作品など様々な作品にチャレンジしていました。続いて空間遊びプログラムです。ミライブラリの空間全部を使って様々な世界を表現します。ジャングルであったり、水族館であったりします。これは、土曜日に、一日がかりでやっています。部屋中に荷造りのビニールテープを張り巡らし、スズランテープをかけたりするなどして、海や森を作って、そこに生き物を配置して自由にそこで遊ぶというプログラムです。子どもたちは一日中、そこで遊んでいます。後は、社会人プログラムというものもやっています。ミライブラリでは、社会で活躍する大人たちとの接点を大事にしていまして、いろんな業界で活躍する大人の人に来てもらって、それぞれの生業、得意分野でプログラムを展開してもらっています。子どもたちにとって、いろんな大人たちに関わること自体にも価値があると思っています。服飾デザイナーの方に来てもらって給食袋を作ったり、建築設計士の方に来てもらって設計の図面を描いてから模型を作ったり、スポーツインストラクターの方と運動遊びなどをしています。今月は、組紐の職人さんに来てもらって、子どもたちと組紐作りのワークショップをする予定にしています。ミライブラリの一押しはフィールドプレイプログラムです。月に一度、土曜日にいろいろなところに行っています。4月の大文字登山に始まり、双ヶ岡では、トレジャーハンティングといって双ヶ岡全体を使った本気の宝探しを行いました。後は、宝が池公園全体を使って大捜索かくれんぼを行いました。琵琶湖に行ったり、紙漉き体験をしたり、夏休みには大学体験に行ったり、キャンプにも行ってきました。1泊2日ですが、滋賀県の高島市で、キャンプファイアーをするなど盛りだくさんのプログラムを実施しました。日常的に接している子どもたちですが、お泊りをすると、また違った表情を見せてくれたり、新しい関係性ができたりします。子どもたちにも記憶に残るキャンプとなり、先日も、冬休みにもサマーキャンプに行きたいといっていました(笑い)。

私たちは、子どもたちの放課後をもっと豊かにもっと楽しくしたいと考えています。放課後は、子どもたちにとって家庭や学校以外で過ごす唯一の時間です。この時間に子どもたちがいろいろな経験をして、自らの学びの時間に変えていく機会でもあると考えています。放課後の学びとは、学校の勉強とは異なり、子どもたちの根っこの部分を形成する可能性を持つ学びだと思っています。それには子どもたちの楽しいという感情がすごく大切だと考えています。楽しいからこそ続けられる、覚えていたい、さらに追及してみたいという感情が生まれてくると思うのですが、それは大人も子どもも変わらないと思っています。子どもも大人も、自分がやりたいと思っていること、主体的に取り組めることが楽しいと思えることだと思っています。誰かに与えられたり、やらされるだけでは本当の楽しさは生まれません。子どもたちがやりたいと思ったことが、実際に行動が伴った時、自分の心や頭、体を動かした結果、生まれるものが楽しいと思えるのではないかと思います。その楽しいを生み出す仕掛けが、先ほど紹介した毎日の体験プログラムです。これらのプログラムは、見える部分だけでなく見えない部分を含めて、細部にこだわって作っています。これだけのプログラムを毎日続けることはなかなかのハードワークですが、その一個一個を大切に丁寧に作り込んでいます。私たちが一方的に行うのではなく、その過程を大切にして子どもたち自身がやりたいと思うような、肯定的な声掛けだとか動機づけをしっかり行っています。

子どもたちのその日というのは、その日しかありません。その時、その瞬間、子どもたちが何を考えているか、何に気付いているか、どんなことを思っているかということを大切に考えたいと思っています。その都度、その都度しっかりと、子どもたちのフォローやフィードバックを行って丁寧に関わっています。子どもたちは、遊びを通じて社会的に成長するといわれていますが、遊びにもいろいろあると思います。どんな遊びでも、自分の頭を使って、友達と関わって、自分の手で何かを生み出すという、自分の世界を作っていればこそ、成長に繋がると思います。こんなに社会がどんどん変化していく中で、しかも複雑化して十年先が見えない時代の中で、子どもたちもその渦の中にいます。それに対して、子どもたちが遊ぶとか、多様な経験をする場所がすごく減っています。だからこそ、放課後の学童保育という時間ではありますが、楽しいと思える遊びの機会を提供することによって、子どもたちの未来に向けた成長の切っ掛けを作っていきたいというのがミライブラリの大きな思いです。今だからこそ、豊かな経験から楽しんでもらえるような日常を子どもたちに届けていきたいと思っています。私たちとしてはそんな成長の過程や機会を、家庭環境に関係なく全ての子どもたちに届けたいと思っています。

民間でやっているので自主財源ということになるのですが、利用料金の独自の減免制度を設けています。財源は、NPO法人の正会員の方々の会費であったり、運営費から切り崩して確保しています。ですので、今は受け入れられる人数というのは限られたものになってくるのですが、少しでも受け入れる人数を増やして、一人でも多くの子どもたちにいろいろな経験を届けていけたらと思っています。
ミライブラリの入り口に子どもたちの活動の様子を撮影した写真をいっぱい貼って、定期的に更新し、お迎えの時に保護者の方に見てもらえるようにしています。また、月初に保護者の方に手書きで子どもたちの様子の手紙を送っています。それらは、子どもたちの放課後の姿、そこでしか見せないものを保護者の方にも知っていただきたいとの思いからです。一人一人の子どもの中に輝いている瞬間がたくさんあります。そのことを保護者の方に知ってもらうことが、保護者の方にとっても子どもたちにとっても、今とこれからに対してプラスに働くのではないかと思っています。自分のお子さんが他人から褒められる機会を作っていくことも、学童保育の大きな役割なのではないかと思っており、子どもたちの良いところをできるだけ多く見つけていきます。「すべての子どもたちに未来につながる「楽しい」日常を」がミライブラリのテーマです。今の大人にできることは、子どもたちが自ら育つ切っ掛けを作ることしかないのではないかと思っています。ですけども、その切っ掛けとなる存在である大人がすごく少ないというか、そもそも子どもたちとの接点が少なくなっています。ほとんどの子どもたちは、日常的に接触する大人は、学校の先生か、習い事の先生、保護者の方だけという世界で生きているんじゃないかと思っています。私たちが体験プログラムという形で放課後の時間に多様な大人と接する機会を作ることで、こういう大人の関わり方、こういう接点の作り方もあるんだということも地域や社会に対してアピールし、伝えていきたいなと願っています。
以上で、私のお話しを終わりたいと思います。ありがとうございました。

<話題提供2 放課後等デイサービス「そらいろチルドレン」代表 坂口 聡氏 一般社団法人くじら雲 理事>
今日は、「こころ育ち合うところ」というテーマでお話しさせていただきます。「そらいろチルドレン」、略して「そらチル」と覚えていただければ嬉しいです。そらいろチルドレンは新大宮商店街の中にある放課後等デイサービスです。
最初に、そらチルのこれまでの歩みについてお話しします。私は佛教大学を卒業しまして、上京区の児童館に勤めながら2010年、社会人2年目の時に放課後クラブ「ココ」を立ち上げました。堀川北大路の角にある京都復活教会をお借りして、毎週水曜日に放課後の小学生達を集めてボランティアグループとして運営していました。2013年には「新大宮子どもの基地」を、京都府から助成金をいただいて1ヶ月間のイベントとして開催しました。私と同年代の講師の方をお招きして、イラストとか写真、日本語、ダンス、音楽などいろんな授業をしました。講師の方々は、今ではNHKに出演したり、フジロックフェスティバルで演奏するなど、活躍されています。2016年に一般社団法人くじら雲を立ち上げ、児童館を退職し、放課後等デイサービスを開始しました。今年からは楽土(がくどー)クラブと呼ぶ土曜日の取組を始めました。
皆さん、そら色と聞かれて、どんな色を思い浮かべられますか。そら色は、必ずしも青空とは限りません。雨の日があったり、晴れの日があったり、雲が出たり、夕焼けになったり、虹が出たり、月が出たり、風が吹いたりします。それって、子どもたちとか大人の心と同じだと思います。子どもたちの心がどんな空模様でも受けとめられる居心地の良い場所をみんなで作ろうということで、そらいろチルドレンという名前で運営しています。そして、放課後等デイサービスとは、国の制度で、障がいのある子供達や発達に特性のある子どもたちが放課後や夏休みを過ごす場所です。6歳から18歳まで就学年齢の子どもたちが色々な学校から遊びに来られており、個別支援計画に基づいて活動しています。
現在は、15の学校から小学1年生から高校2年生までの子どもたちが毎日7名から11名、遊びに来ています。子ども達の学校は幅広く、京都市立小学校の普通学級や育成学級、私立小学校の普通学級、京都教育大附属の小中学校、北総合支援学校、私立中学校、さらに盲学校からも来られていますし、不登校のお子さんも遊びに来られています。
そらチルの1日は、職員の打ち合わせがあって、子どもたちが学校から帰ってきて、みんなで遊んだり、公園行ったり、お買い物に行ったりして、午後4時半からおやつを食べます。誕生日の子どもがいるときは、お誕生日会をします。5時くらいからさようならをして、6時半に掃除、振り返りミーティングとなります。通常、放課後等デイサービスでは送迎サービスをしているところが多く、そらチルでも半数程度は車で送迎し、親御さんが送り迎えしている子どももいます。けれども、基本的には自分で通えるように、スタッフが歩いて学校まで迎えに行って歩いて送って帰るという練習をして、今は、一人で歩いて来られる子どももいますし、市バスで迎えに行って、市バスで帰っていくというお子さんも居ますし、帰りはヘルパーさんと帰る子どもも居ます。車の送迎にしか国の補助は出ないのですが、自立支援の一環として取り組んでいます。
今年、立ち上げた楽土(がくどー)クラブですが、鉄道博物館や動物園に行ったり、DariKさんのカカオからチョコレートを作るキットを使ってチョコレート作りの体験をしたりしています。先日、京都造形芸術大学のこども図書館ピッコリーに行って工作をさせていただき、子どもたちもすごく楽しんでいました。また、交流フットサル企画ということで、いろいろな放課後等デイサービスが集まって、MKボウルの施設で月に一回フットサルをしています。夏休みにも色々なところに出かけていて、防災センターや警察広報センターなど普段行けないようなところに行きます。暑い時期には漢字ミュージアムなど屋内の施設を探してお出かけを継続しました。
そんな、そらチルが大切にしていることは、3つあります。「こどもたちと一緒に」、「ご家族と一緒に」、「このまちと一緒に」です。第一のこどもたちと一緒にでは、子どもたちと同じ目線で一緒に楽しんだり、共に歩んでいくということを大切にしています。僕たちも、あだ名で呼ばれるなど、親近感のある近所のおにいちゃん、おねえちゃん、おじちゃん、おばちゃんという感じで接しています。第二に、ご家族と一緒にでは、送迎の時だけではなく、様々な機会を設けてご家族と顔の見える関係を築いています。半年に一回、個人面談を行ったり、個人参加のプログラムを開催するようにしています。例えば、そらチル食堂の開催です。昨年の9月から始めていますが、いわゆる子ども食堂のような取組です。2ヶ月に1回くらい、土曜日の夕方に行っています。普段、顔を合わせることのないご家族同士が一緒にご飯を作って親睦を深め、悩みを共有したりしています。前回は50名くらいの方に参加いただきました。民生児童委員の方や八百屋さんから野菜やお米を寄付いただいたりしています。さらに、不定期ですが、そらいろ通信を発行して親御さんに子どもたちの放課後の日常を知ってもらっています。第三に、このまち(地域)と一緒にでは、新大宮商店街の方々と繋がりを持ったり、子どもたちが通っている学校、児童館とか他の放課後等デイサービスと横の繋がりを持つと共に、児童発達支援とか保育園という今まで行っていた場所、さらに卒業後の進路など縦の繋がりを持っています。こうした関係を大切にして交流させていただいたり、子どもたちの情報を共有したり、コラボ企画を開催したりします。そうして色々なイベントに参加しています。今年も、新大宮商店街の夏まつりに参加し、1階にはゲームコーナーを設け、2階には乳幼児に授乳したりおむつ交換が出来る休憩できるコーナーを作って提供し、延べ200名の方にご利用いただきました。さらに、11月10日には北区社会福祉協議会が開催する「フナオカスタンダード」というお祭りにも子どもコーナーを出店させていただき、松ぼっくりやゴミを拾ってくると景品がもらえる公園ビンゴなどを行います。北区の多くの福祉施設が参加するイベントで、多くの方にそらチルを知っていただけます。さらに、同志社大学や京都府立大学の障がいのあるお子さんと関わるサークルと一緒に、年に一回開催している合同運動会にも参加します。これは、実行委員会形式で5月くらいからスタッフが集まって準備をします。また、紫野児童館に遊びに行ったり、ミライブラリさんにクリスマスオーナメントを作りに行かせていただきました。紫野小学校などで活動されているタイムケア事業「うぃず」に通っている北総合支援学校の中高生もそらチルに遊びに来ていただいたりしています。
ここからはそらチルのスタッフ自身の活動の紹介です。2月に新大宮商店街で開催された「目をつむる写真展」に参加し、そらチルに「目をつむるスタジオ」を開催し、高齢者施設紫野のおじいちゃん、おばあちゃんに来ていただいて撮影会をしました。また、国土社が発行する月刊「社会教育」という雑誌の8月号に寄稿しました。実践報告や研修に参加するだけでなく、今日のようにそらチルの活動をご紹介する機会を沢山いただいています。北区役所の子育て交流会だとか、放課後デイサービスの交流会、児童部会、ボランティア講座など、様々な場所で事例発表させていただきました。今年度から北区民まちづくり会議にも委員として参加しています。
私たちのような放課後や夏休みの子どもたちをお預かりする施設は、サード・プレイスと呼ばれることが多いのですが、私たちは必ずしも三番目でなくても良いなと思っていて、他に楽しい場所があったり、習い事が好きだったりする子どもにとっては四番目だったり五番目だったりしますし、学校に行っていないお子さんにとっては二番目でも良いかなと思っています。そういう意味で、もう一つの居場所ということでワン・モア・プレイスという言葉を大事にしています。
現在、小学生から高校生まで長い期間関わらせていただけるのですが、高校を卒業するとぱったりと関係が切れてしまいます。仕事が4時とか5時に終わった後に行く場所がなくて、お家で過ごすという状況になるという声を聞きます。今後の展開ですが、高校生から来ることができ、社会人になっても来ることができるような居場所づくりを月に1回くらいから始めていきたいと思っています。ご飯を食べながらの楽しい会を開催し、親御さんやお子さんのニーズを聞きながら充実させていく居場所を作っていけたらなと思っています。何よりも、子どもたちが自分らしく育って、安心して大人になれるまち、子育てがしやすいまちづくりに、そらチルも少しでも貢献したいと思っています。
最後になりますが、私たちの理念は「みんなの居場所をみんなでつくる」ということです。必ずしもスタッフが考えて提供するだけではなく、ご家族と一緒に、このまちと一緒に、そして子どもたちと一緒に居場所をみんなで一緒に作っていきたいと思っています。
ご静聴ありがとうございました。

<対談・意見交換>
寺田)お二人のお話をお聞きになって、お互いに聞いてみたいなと思われたことや、ご意見がありましたら、それぞれが発言をお願いします。
村上)子どもとの距離感をどの様にしておられるかお聞きします。私どもでも出来るだけ、身近な存在であろうとしていますが、友達では近すぎますし、先生と生徒という関係性では距離が空きすぎると感じています。普段、どんなことを意識して関わっておられるのかお伺いします。
坂口)あだ名で呼ばれることの一番のデメリットはなめられることなんです。「お前の言うことは聞かへんわ」となりがちなんですが、僕たちは子どもたちを小さい人、教えられる人、助けられる人ということではなくて、対等な人間としてみています。ただ人生の経験が少し長い人であり、色々と伝えられることがある存在であると意識しています。それで、モミクチャになることもありますが、それはそれで良いことだと思っています。たたかれる等ということがあったら、しっかり話をしますが、対等な関係だからこそ出来ることが沢山あると考えていますので、デメリットもあるけれども対等な関係が心地よいなと思っています。
坂口)あれだけのプログラムを企画して実行しておられることは、本当にすごいなと思っています。ちなみに対象は小学生なのでしょうか?あるいは、中学生なども自由に行っても良いのでしょうか?
村上)自分で言うのも何ですが、本当にすごいんです。毎月、プログラムを考えるのですが、3人で案を出し合って前々月の半ばくらいから作り始めます。前月の半ばには完成させて、皆さんにご案内します。基本的には小学生を対象として企画しています。ウチのメンバーの中にも中学生の居場所問題にすごく関心を持っている者もいるので、中学生まで広げていきたいとは思うのですが、今は、自分達で出来る力量の範囲で取り組んでいます。今後の展開の中で、中学生も対象としていけたらと考えています。例えば、ジュニアリーダーという形で、中学生に小学生と関わりを持つ機会を作って来てもらうとか、高校生にも同じような形で来てもらうことなどが出来たら、ウチとしても理想の形に近づけていくことが出来ると思っています。

寺田)お二人の活動は対象も方法論も異なりますが、共通するところも少なくないと思いました。例えば、子育てを通じて親育てというか、子育てを通じてより良い地域社会を形成していく方向を模索されているように感じました。その辺りをどの様に考えておられるのかお二人にお伺いします。
村上)親育てというフレーズが出てきましたが、正直に言って、親を育てるということに自分達の意識を向けていないというか、その立場に無いと思っています。これまでの経験の中で、様々な子どもたち、ご家庭と関わってきました。けれども、この難しい社会の中で、そして時間が限られた中で、保護者の方も頑張られています。学童にあずけられる保護者の方は、働いておられるか、何かしらの理由であずけなければならない状況にあります。ぎりぎりの状態にある保護者の方を育てたいというより、一緒に歩みたいと思っています。保護者の方しかできないことの方が沢山あって、保護者の方の接点の無い放課後の時間に私たちが出来ることをしたいと思っています。社会との接点とか関わりについても思うところもあって、昔は、子どもを育てるのは両親だけでなく、祖父母や隣近所の大人たちが関わっていたと思います。親だけで子どもを育てなければならないということは、決して楽なことではないと思っています。そういう意味で、昔に戻るのではなく、今の時代に合った保護者の方と社会との新しい接点、新しい関わり方を模索していかなければならないと考えています。いろんな意見があって、今の資本主義的な価値感ではない新しい価値を創造しようとか、数年前に言われていたコレクティブインパクトなどいろいろあります。私個人の考えとしては、子どもたちの世界に経済的な価値創造も含めた様々な社会との接点を築かなければいけないのではないかと考えています。学校であったり、非営利活動など特定の分野の人たちだけが子どもたちに関わるのでは無く、社会全体が子どもたちに関わっていくようにスタンダードを見直さなければならないと思っています。その一環として、子どもたちに興味を持ってもらうためにプログラムの中に社会人を呼んでいるというところがあります。多くの人たちは、子どもは学校が育てるものだと思っていると思いますが、学校だけでは圧倒的に足りないと思っています。そういう部分をどの様に作っていくかということがこれからの私自身の事業課題でもあるかなと思っています。
坂口)私たちも親を育てようという気持ちは全くありません。子どもたちにとって居心地の良い場所を作るということは、親御さんがその間、安心して働けたり、祖父母の介護が出来たり、兄弟との時間を作ったり出来るので、親御さんにとっても間接的に居心地の良い居場所となっているのかなと思っています。そらチル食堂では、親御さん同士が交流して、学校も違うし年齢も違うお子さんの親御さん同士が話をし、先輩の親御さんから制度や施設、人材など有益な情報の提供があるという意味でも親御さんにとっての居場所になれば良いなと思っています。社会全体に対して何ができるか分かりませんが、子どもたちが安心して大人になれるというか、その子どもにとって居心地の良い場所があって、大人になってもそういう場所がある社会になればいいなと思っています。子どもたちに対しては、いじめであるとか不登校、自殺などに対して何が出来るのかずっと考えています。まだ、具体的なアクションは出来ていませんが、子どもたちが幸せに暮らせて、その廻りの人たちも幸せになれる社会にするために少しでも貢献したいと思っています。皆さんからも何か教えていただければ嬉しいなと思います。

加藤)私は、地域に根ざした活動は今までしていませんでした。どちらかというと子どもたちがどうしたら豊かに育つのかという視点のガイドですとか、子どもたちにどうすれば自由な表現活動が促せるのかということに焦点を当てて、コンテンツを作ったり、企業と連携した取組をしてきました。ですので、今回、皆様とお会いさせていただいたことはとても有意義でした。ここは西陣地域ということでもありますので、その関連の廃材を皆様のところでもうまく活用していただいて、そのことが、また職人さんの元気ですとか町の活性化に寄与できるように連携が出来たら嬉しいなと感じています。子どもたちにとって廃材も大切な遊びの道具です。それも200種類くらいあると大きな宝の山になります。町の活動から出てくる様々な廃材を子どもたちの遊びや成長に活かし、そのことが町の活力となっていく、相互に連携する仕組みが出来たら子どもにとっても大人にとっても社会にとっても楽しいのではないのかなと感じました。

真下)村上さんは、子どもたちに豊かな心をと、坂口さんはワン・モア・プレイスというみんなで集まる場所を作るということで、理念は素晴らしく、安心して暮らせる社会を作るということについては共感しました。そして、そういう組織を本当に応援したいなと思います。その中で、村上さんからは、生活保護世帯の方には低額の料金で提供したりされているというお話しがありました。事業継続に関して、行政の補助制度のリスクというのはどの様に考えておられるのでしょうか。
村上)はい、ありがとうございます。私どもは完全に民間の運営になりますので、行政からの補助金はいただいておりません。ですので、先ほど申し上げました減免制度に関しましては自主財源ということになります。ただ、どんなに素晴らしい理念を掲げたとしても事業として継続して行かない限りは意味がありませんので、利用される子どもたちにとってもつぶれてしまったら迷惑な話ですので、どの人数までなら減免制度が継続できるのかということはしっかりと計算しながら事業を行っています。
坂口)そらチルは、国の制度に則った放課後等デイサービスという事業ですので、この日に何人来たということでお金が入るシステムになっています。また、京都市が親御さんに補助を出しているので、親御さんにとっても児童館の学童クラブよりも負担は少なくなっています。非課税世帯や生活保護世帯は負担がゼロとなっています。国の制度に沿っているという意味では事業として安定しているのですが、放課後等デイサービスという制度自身が始まったところなので、制度として安定していません。直近でも、施設が増えすぎたので報酬の減額改定があり運営が厳しくなっているので、土曜日企画を始めたりしています。始めた当初は赤字だったのですが、色々と工夫をしたり、口コミで広がって利用者が増えることで、なんとか黒字になっています。ただ、放課後等デイサービスという制度の枠にとらわれずに活動したいと思っていますので、今後、どの様な事業スキームとなっていくか分かりませんが、子どもたちの居場所づくりをしていきたいという思いは変わりません。

大島)お二方とも、愛にあふれたお話しをありがとうございました。坂口さんの場合は、ご自身のライフストーリーからしても、この界隈で活動が完結していますが、村上さんの場合は子どもの需要が先なのか借りられる施設から等供給が先なのか、どちらの理由で今の場所で開業されたのでしょうか。
村上)前提として、この地域は子どもたちが多いと言うことは分かっていましたので、需要はあると思っていました。また、ミライブラリの3人のメンバー全員がこの地域に何らかの縁がありました。仏教大学や紫野高校に通ったりしていました。そういう意味で自分達に身近な場所であるということも最後の決め手になりました。本当は北区の方で探していたのですが、偶然見つかったところがぎりぎり上京区だったということです。

大島)もう一点、基本的には共働きの方たちが子どもたちを預けられると思います。そして、親御さんは自分たちが留守の間に子どもが留守番することが心配だから塾か学童保育かという二者択一で選択されていると思います。ミライブラリに通われている方たちは、子どもかあるいは親のどちらが判断してミライブラリに通わせているのでしょうか。
村上)4月から運営していますが、実は、昨年の11月からプレオープンということで場所自体は開けていまして、この間に沢山の体験プログラム会を実施したのです。片方では親御さんたちへの入会説明会をしつつ横では子どもたちが体験プログラムをしているということを積み重ねました。お母さんたちがミライブラリの内容に共感してくださったことは間違いないのですが、最後の決め手になったのは子どもたちの意見という方が多かったです。「どうやった」と子どもたちに聞かれて「楽しかった」と言ってくださった方々が今も続いています。本オープンしてからも同じような流れで、子どもたちが行きたいと言ったから行かせましたという親御さんが多いです。ただ、塾との二者択一というご質問ですが、両立している子もいます。僕たちは中抜けと呼んでいますが、ミライブラリに来て、塾に行ってミライブラリに帰ってくることも有りとしています。それを入退室の連絡システムで今、出て行きました、今、帰ってきましたということが分かりますので、ミライブラリを選択されている方もおられます。

大島)施設のスペックですが、国の制度に即してやろうとすれば、スタッフの人数や部屋の広さや設備など基準がありますが、お二人はそれぞれ、どのような施設要件が必要となるのでしょうか。
坂口)大変、厳しいです。京都市は特に厳しくて、木造だと2階建てまでとか、避難階段や耐火設備の基準などがあって、京町家などでは開設しにくいと思います。バリアフリーなどの要件もあります。こうした要件に会うところを探していて、結局見つけたのが新大宮商店街の中だったということです。
村上)補助金を受けていないということで法律的な縛りはありませんが、元々は児童館で勤務していたこともあって、その辺りは結構意識していました。補助金を受ける学童保育では子ども一人当たりの平米数が決まっていますが、その基準では相当に狭いので、ミライブラリは逆にその基準よりはかなりゆったりとした定員設定としており、一人当たり2㎡以上としています。

宗田)とても良いお話しを伺いました。何よりも32歳と34歳と若いお二人が社会的な課題に取り組んでおられることが素晴らしい。昔は福祉の分野や障害者の分野でも、社会に対抗し社会を変えていこうという取組があったと思いますが、お二人は、子育てを家庭から社会へ、みんなで子育てするような社会が良いと思っておられて、そうした社会の最先端をご自身で切り開いていこうとされています。理想の社会はこうあるべきだと信じる形で自分が活動する。そのことによって気付いた人が共感して社会が変わっていく、そういう社会改革をしようということだと理解しました。それは、かっこいいスタイルであると同時に、経済的にも活動が継続するところまで来ているとすればとても良い社会だと思います。また、先ほどはコレクティブインパクトとおっしゃったけれども、行政とNPOなり市民団体が連携していくようなことが出来てくれば、本当に良い形だなと思います。私も、京都YMCAの神崎さんとご一緒に、社会教育の関連の仕事をしていますが、YMCAは一人が良くなればみんなが良くなるという取組ですよね。今、そのことを思い出して、お二人の取組もその理念に近い活動であり、そういう意味で神崎さんのためにも喜びたいと思っています。そういう新しい取組を西陣で出来るということは素晴らしいし、縁がある方も多い仏教大学の社会福祉教育の成果なのだろうとも思います。西陣が、そういう場所として文化的にも高まってきているし、社会を変えていくホットスポットになっているとうことを今日は強く感じました。ありがとうございました。

寺田)最後にお二人から一言ずついただいて、締めたいと思います。
村上)今日は、ありがとうございました。今、お話した内容が全てです。今までの活動の中で疑問に思うこと、違うだろうと思うこと、こうしたかったんだと思うことが沢山ありました。それを形にしたくて独立し、今皆様の前でお話ししていると自覚しています。おっしゃっていただいたように一人から変わるというか、私自身から、私たちの法人から変わるという情報発信を強めていきたいと思っています。また、固定概念にとらわれず、学童保育を超えた何かを模索していきたいと思っています。学童保育という言葉はこれまでの社会が作ってきたものです。その言葉を使っている限りは、現状から抜け出せないように思っています。その次にあるもの、それを超えるものは何かということをずっと考えています。これからも、それを仕掛けていきたいなと思っています。少しでも関心を持っていただき、私たちの団体に関わっていただけたら嬉しいなと思っています。ありがとうございました。
坂口)「このまちといっしょに」というのが私たちの理念になっています。そらチルのスタッフだけで考えて出来ることは限界があります。今、会場に居る皆さんも町の皆さんも仲間だと勝手に思っているので、皆さんと一緒にこの町の宝物である子どもたちの居場所づくりに取り組ませていただけたら嬉しいなと思っています。そして、子どもたちに居場所を作ることが私自身に沢山の居場所をもたらしてくれています。ココとかそらチルだけでなく、今日のこの場も含めて、様々な場所でお話しをする機会をいただいています。そういう意味で色々な繋がりが出来て、居場所が増えていることを嬉しく思っています。私たちは新大宮商店街で始めて2年目の新参者ですが、皆さんと手を取り合って、子どもたちが幸せに、そして、この社会のみんなが幸せになれるようなまちづくりに貢献したいと思っています。今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました。

寺田)ありがとうございました。最後に、お二人に大きな拍手をして、本日の中締めとします。